【読書】脳のフィットネス 完全マニュアル フィル・ドブソン
脳科学ブームが始まってどれくらい経つのだろう。僕自身も脳科学にずいぶんと興味を持って接してきたし、仕事柄脳のことについて考えることも多い。
この本はその脳のフィットネスのための様々なワークをマニュアル化した本だ。そういう意味でとても実用的で、手元に置いて何度も見返すにはいい本だと思う。
ただし脳という臓器にすべてがまとめられるわけではないということは知っておいた方が良い。人間の体は有機的なネットワークで構成されている。脳はその中でそれなりの役割を担っているが、それほど重要ではない。
それが証拠にこの本に出てくるワークのほとんどが脳ではない身体の一部を使ったワークだ。なので脳のフィットネスという言葉はもしかしたら実は脳に働きかける身体のフィットネスと言えるかもしれない。
その中でも例外なのは、やはり「思考」についての部分だろう。思考は身体機能ではないので、身体の一部を使って変えることは難しい。姿勢やボディーランゲージが脳を変えるという話はこれまでにも取り上げたが、あれは思考を変えるというよりも気分を変えるものだと思う。
思考を考える上で非常に大事なのは認知フレームワークだ。そしてそのフレームワークはほぼ過去の経験や記憶から構成されている。もちろん個人でそのフレームワークは異なるのだが、そこをどう書き換えるかも脳のフィットネスと言う意味ではとても大事な部分だと思う。
人間は自分の意志で動いているようで実は違うという説もある。何か行動する際に、意志よりも先に脳細胞が発火しているという研究結果さえある。認知フレームワークだって結局はそうだ。今の自分の認知での判断ではなく、過去の記憶という妄想による判断だ。今を感じられるのは身体だ。その視点でこの本を読むととても役立つに違いない。
Life is the dancer and I am the dance.