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ボンヤリズム

Life is the dancer and I am the dance.

【読書】暇と退屈の倫理学

読書

 

暇と退屈の倫理学

暇と退屈の倫理学

 
 
独身時代、仕事後に大型書店の書架をまんべんなく見て回る事を習慣にしていた。その時になぜかワクワクする書架があったのだが、その一つが哲学の書架だった。とは言っても、哲学書を読み切る忍耐力もなく実際に手に取る事は少なかった。
 
その中にあって何度も気になった本がこの本である。何とも言えぬ退屈感を普段から抱えていた自分に、この本は答えを与えてくれそうな雰囲気をプンプン出していたのだ。
しかし、この本と書店の書架で出会って、実際にその中身に触れるまでに五年を要した。その間に結婚し子供が二人でき、仕事では昇進した。
 
自分を取り巻く環境が大きく変わり、日々の忙しさの中で退屈感がなくなったかと思いきや、実はその逆で得体の知れぬ焦燥感は前にも増して強くなるのだった。このままでいいのか?焦燥感の背景には退屈があったと思う。
 
そこに満足を得られない結果、「決断」を求め続ける生活に陥ってしまったのだなとこの本を読んで気付かされた。そこには揺れ動く自分、その揺れ動きに答えが出せない自分の歯痒さと、決断しきれない中で引き裂かれる自己があった。
 
この本を読んだ後で、それは引き裂かれた自己ではなく、自らを決断という行為で不自由にする事で自由になろうとする矛盾した行為だったということに気が付いた。そこにある家族、そこにある仕事、そこにある物をきっちりと受け取っていなかったのだ。
 
僕にはこの本の細かいところを細かく引用して論じ、その魅力について余す事なく語る体力はないけれど、読み進めながらやけに軽くなる気持ちがあったことは言っておきたい。スッキリとした答えそのものにではなく、そこに至る過程の中にその原因があるのは、読み進める過程で気持ちが軽くなったという事実が物語っている。
 
五年の年月を経て、この本を手に取れたことは何かの必然だったのかもしれない。
 
Life is the dancer and I am the dance.